新刊「緑人社の青春」紹介

「緑人社の青春」は小樽文学館叢書第二巻として、A5版793頁で2011年12月に刊行されました。著者、亀井志乃は北大大学院卒の文学博士で道立北海道文学館の研究者です。

2007年2月に札幌市の北海道文学館で「人生を奏でる二組のデュオ」-有島武郎と木田金次郎・里見弴と中戸川吉二展-が開催されました。著者はこの企画展で早川三代治の四男、佳男から提供された大正10年から14年にかけてドイツ・ボン大学に留学中の早川三代治に宛てた木田金次郎と高田紅果などの24通の書簡をもとに企画原案と書簡の翻刻、展示の進行等を担当しました。

この文学展から3年後の2010年初夏に市立小樽文学館で「高田紅果展」が開催された時、新たに昭和になってからの木田金次郎より高田紅果や早川三代治に宛てた書簡が発見されました。本書「緑人社の青春」はこれら一連の文学展の背景にある貴重な書簡類と有島武郎から木田金次郎に宛てた書簡とを対比しながら、その他の多様な資料、調査をもとに解説文と注釈を付け加え、書簡集としてまとめられたものです。

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物語の展開される大正時代の小樽はこの当時北海道経済の中心都市として好景気にわき活気にあふれていました。本書は青春の日々をこの地で送り活躍した文学青年や羊蹄画会、小樽緑人社などの芸術グループを取り上げ、わけても高田紅果と早川三代治の二人と有島武郎の小説の主人公として世に知られた木田金次郎との交友関係を中心に書き進められてゆきます。美術や文学に係るこれらの青年達は有島武郎が紹介するワルト・ホイットマンの詩「草の葉」の思想〝人々が皆平等で友情に結ばれ、理想的社会を目ざす〟アメリカンデモクラシーの精神に共感し、自らの生き方、自らの芸術理念を構築して互いの交流を深めてゆきました。

物語の進展と共に、著者は「生れ出づる悩み」の木田金次郎像からは伺い知ることが出来なかった青年画家木田金次郎の一面を木田が早川三代治に宛てた書簡や高田紅果など小樽緑人社の面々との交流を通じて明らかにしてゆきます。木田が東京での絵画修業、勉強を望んでいた事。ドイツ表現主義に関心を持ち、抽象表現やキュービズムに魅力を感じていた事。有島が木田に求めた〝自然を忠実に眺める〟理想の画家像とは対局にある新芸術の画風や技法に共感をおぼえていた事。有島とは芸術観の違いがあったのではと推測される事など、有島武郎から自立を目指す木田金次郎の姿が読み取れると推考しております。
木田金次郎の画業に関心の有る方々に是非一読をお勧めする一冊です。
(M・T)

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〈緑人社〉の青春

早川三代治宛の木田金次郎・高田紅果書簡で綴る大正期芸術運動の軌跡

亀井志乃著〈小樽文学館叢書2〉 定価 2,800円

当館にてお取扱い中!!

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