冬の京で禅刹広隆寺を訪ねて

 翌日、学生時代、東京から京の寺々に仏像やお庭を楽しみに足繁く通った頃を思い出し、何十年振りに仏像彫刻の中で当時一番のお気に入りであった宝冠弥勒菩薩半跏思惟像、いわゆる広隆寺の弥勒さんに再会するため洛西太秦の地に向かった。広隆寺は、帰化人秦河勝が推古十一年(603年)に聖徳太子から仏像を賜り建立したと、日本書紀に記されている京都最古の寺院である。好季節の春や秋には修学旅行生や観光客で賑わう洛西周辺も、厳寒のこの季節はさすがに人影も少なく、静かな古都のたたずまいであった。三条通りに面した南大門より境内に入ると、講堂を経て、ご本尊聖徳太子像を祀る上宮王院太子殿がある。池を挟み北側に、飛鳥・天平から鎌倉時代に至る仏像を始め、仏教美術の数々が納められた新霊宝殿が在る。ここでは仏像彫刻の時代変遷を目の当たりにすることが出来る。国宝20点、重要文化財48点を有し、なかでも宝冠弥勒菩薩像は日本の国宝第1号で、そのお姿は大変美しく素晴らしい。
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他にも十二神将像、阿弥陀如来座像、十一面千手観音立像など優れた仏像彫刻がたくさんある中で、この弥勒菩薩像が一番だと私は思っている。右手を右頬に触れ、衆生を救うため思慮をめぐらせているお姿と云われているが、その表情は実に優しい。微笑が良い。素朴で無心の微笑だ。なんとも云えない心が安らぐ微笑だ。姿も表情も広隆寺の弥勒菩薩像とは異なるが、西欧の彫刻にロダンの考える人がある。微笑と云えばダ・ヴィンチのモナ・リザがある。「和を以て貴しと為す」と十七条の憲法を定めた聖徳太子由来のこの寺で、弥勒さんの穏やかな微笑を見つめながら、東洋と西洋の文化の違い、心の違いを考えさせられた。信仰と芸術との美しい調和を目にして、私は再会を果たした弥勒菩薩像と別れ、静謐な広隆寺新霊宝殿を後にした。 M.T
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