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藤倉英幸展を鑑賞して

有島記念館で開催されていた、藤倉英幸作品受贈記念展示part1の第二期を訪れた。

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四季折々の北海道の自然を題材とした切り絵作品は、精緻でありながらも、藤倉氏が北海道の地に馳せる思いの感じられる、情感に溢れたものだった。

特に面白く鑑賞したのは、春を描いた二作品だ。一つは、どこまでも深い雪に覆われた大地が印象的な「遅い春」。
そして二つ目には、背景にはまだ白い山々、前景には全く雪の残らない農道と田畑が描かれた「早い春」。
どちらも前面に穂をつけたネコヤナギの枝が置かれているが、前者は1994年、後者は2006年と、9年の歳月を隔てて制作された作品である。
一見すると対になったタイトルのように感じられるが、辞書を引けば、単なる対義語でないことがわかる。
「早春」は、春の早い時期を示すのに対し、「遅春」は、暦の上での春が訪れてなお冬の名残と寒さが色濃く残っていることをいうものであり、春の深まった時期をあらわす言葉ではない。

暦の春と実感の春は、特に北国では大きく隔たる。じわじわとやってくる遅い春にしびれを切らしつつ、ネコヤナギの花のような春の兆しを一つずつ見つけてゆくことは、北国ならではのよろこびだろう。

私が有島記念館を訪れたのは春分を過ぎた頃だったが、残雪と呼べないほどたくさんの雪が、本来ならば大きく羊蹄山を望むはずの眺めを遮っていた。今年のニセコの春は、どんなはやさで訪れるのだろうか。(S.H)
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