根津美術館コレクション展『絵の音を聞く』

8月に、地下鉄駅表参道で下りて、青山にある根津美術館に行ってきた。
緩やかな坂を下ってゆくと、竹林が現れ、日本的な建物のわきを歩いてゆくと左側が美術館入口だった。

昔中国の文人たちは、部屋に横たわりながら、心の中で自然の風景を思い描いて遊んでいたと言う。
そしてそれを「臥遊(ガユウ)」と呼んでいたらしい。
今回、根津美術館に並べられていた日本画は、古くは鎌倉時代から江戸時代まで幅広くあり、それぞれ様々な情景があった。

1枚の花鳥図がある。
その画面の中では、花々が美しく咲き小鳥が様々な姿態でいきいきとさえずっている。
ある絵では、数羽の雁が地面で鳴き交わしている。遠くに小さく雁の群れが飛んでいて、その群れに対して地面にいる雁が呼びかけるように身体を曲げて鳴いている。澄んだ秋の空のさえた空気の気配までも感じる。
また夏の山林の景色がある。金箔の背景に緑青色の木の葉の色が映え、ぼかしのない強い調子で群青に近い青の急流が走っている。山百合がりんと咲き、川の流れる音が涼やかに聞こえてきそうだった。
モノクロームの水墨画で強い雨を描いたものがあった。風も出てきて木が激しく揺れはじめ雨の音も強くなってくるのがわかる。雨で空気はかすみ、下りの小道が沢へと変化(ヘンゲ)してくるようだった。
またある絵は、舞楽の様子を映している。獅子脅しの様な面をかぶった踊り手が数人、楽しそうに躍っている。横笛をふく者、太鼓をたたく者みんなが流れるような動きで呼応しているようだった。

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この展示を見ていて、目に見えるものがこれほどまでに、聴覚と繋がっているとは思ってもいなかった。
平面に描かれたものが、季節や空気の変化、植物や動物、人間の動きや様子まで具体的に表現できるのが、凄く不思議だった。

外に出ると、沢地のようにくぼんだ地形に、見事な日本庭園が創られていた。
木々が鬱蒼とし苔が生え、都心とは思われない清涼な空気だった。その庭のあちらこちらに石で彫られた仏や彫刻が点在していて、美術館を核とした、ある種の異空間のようだった。
東京の文化の懐の深さを感じた。(S・S)
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